重くても独特の浮遊感
バルサに肉薄するロール&フラッシュ
次世代を担うハイレスポンス・シンキングミノー
2023シーズンの幕開けとともに、同社からリリースされたニューミノーがこの『リフレイン50HS』だ。写真を見た瞬間の第一印象は「これまでの同社のミノーとは違うな」ということ。それは読者諸氏もきっと同じにちがいない。
外観的な特徴で言えば、まずシングルフックが標準装備されている点が挙げられる。同社の開発担当者の話によれば「当初の段階からシングルフックの装着を想定」していたそうで、「今後5年から10年の間に渓流ルアーはシングルフックが中心になる、あるいはそうあってほしい」との思いから、トレブルフックでの開発は全く考えていなかったそうだ。
次に「見た目の美しさ」というのも、このミノーの特徴だろう。一見するとハンドメイドミノーに近い精緻な印象を受ける。ヘビーウエイトながらも極端にハンプバックしたシルエットでもなく、その肉薄なスリムボディはインジェクションでは珍しい。
「このミノーの原型はバルサのハンドカービングで、人間の目で見て一番美しいと感じる比率(1:1.6)で、ボディやヘッド部の造形をデザインしました。アルミフィニッシュを一部取り入れたのもそうした理由からです」(開発担当者)
ただ、形を最初に決めることで他の機能を犠牲にするのではなく、後述するがあくまでも基本性能を重視しながら、無駄な贅肉を削ぎ落とすような形で、徐々に美しいフォルムへ近づけていったそうだ。
また、同社独自の技術である「スケールブースト」(ベイトフィッシュの鱗のリアルなパターンを真似たホログラム加工のこと)が、そうしたボディをより一層際立たせているようだ。
さて、外見的な部分はこれぐらいにして肝心な機能面について掘り下げてみよう。
最大の特徴は、4.1gという重めのウエイトを有しながらも、その軽快でハイピッチなロールの効いたウォブンロールアクション。そしてひと度ロッドワークを掛ければ、バルサミノー並みのリズムで軽やかにヒラ打ちを繰り返す。その様子は水中でハイピッチに明滅する、まさに小魚を見ているような感じだ。
一般的に、ヘビーシンキングミノーはその重すぎるウエイトのため、どちらかというと動きの鈍重なものが多く、それをカバーするためのトゥイッチ、硬いロッドというのが定番だが、このミノーの場合そうした傾向は少しも感じられない。キャッチフレーズ通りの「ハイレスポンスなシンキングミノー」である。
このあたりの事情を開発者にたずねてみると、多くのトライ&エラーの末に辿り着いた独自の工夫点が随所にみられた。
「レスポンスの良さは、ボディシルエット、ウエイトの位置、オリジナルのリップの角度など、それぞれのパーツが微妙にバランスを保つことで成り立っているのはもちろんですが、各パーツがしっかりとその役割を果たしていることが最大の要因です」
まずウエイトだが、通常のヘビーウエイトミノーは、タングステンのウエイトが2個配置され、どちらかと言えば後方重心になっているのが常だ。そのため飛距離や泳ぎのバランスが安定するのだが、一方で泳ぎ出しが遅く、動きが鈍く、フォール時に尻下がりになるという欠点もはらんでいる。
「リフレインには重さの異なるタングステンボールを4個低い位置に配置しています。そのうちの軽い方をセンターアイよりも前方に配置することで極端なリア重心にならず、スムーズな泳ぎ出しが可能なように調整してあるんです。いわゆるセンターからややリア重心という形ですね。これだとトゥイッチを掛けた時の復元も『起き上がりこぼし』のような感じで早くなり、結果的にレスポンスの向上に一役買っている訳です。またフォールは何にもしないとテールから落ちていきますが、ラインスラックで調整すればほぼ水平に落ちてくれます」
とはいえ、前述のようにウエイトの配置だけで、ハイレスポンスを実現しているわけではない。その大きな理由の一つには、ベリー付近に大きな空気室を設けて浮力を生み出している点も見逃せない。バルサミノーがキビキビとしたハイレスポンスな動きを見せるのは、バルサ自体の浮力によるところが大きいが、それをインジェクションで実現すべく、通常よりも空気室の面積を広く取ったそうだ。
「ミノーの背中の部分に空気室を作ってあるんですが、これが先ほどのセンター寄りのバランスと相互に作用して、独自のレスポンスを生み出しています。あとはリップの角度ですね」
最終的なリップの角度は40度で落ち着いたそうだが、35度だと水を噛みにくく、45度だとアクションが暴れてしまう。ただし、40度の角度でも水噛みが良くしっかり泳ぐのは、先のハンプバックし過ぎないシルエットと独自のウエイトの配置法がそれぞれ絶妙なバランスを保っているからだそうだ。
「要するに、ただ重いだけではなく、軽快に水中を浮遊するようなハイレスポンスなミノー、それが最終的に目指したところです」
最後に、このミノーの有効な使い方を開発担当者に聞いてみた。
「やはり渓流で一番多用されるアップストリームでのトゥイッチの釣りに効果的だと思います。素早く前傾姿勢になるので、流れよりも速く巻くことを意識しなくても自然なヒラ打ちアクションが演出できますし、また淵などの水深のあるポイントでは、ラインにテンションを掛けてフォールさせれば水平に沈んでいくので、無用な警戒心を与えません。これは流芯を挟んだ対岸へのドリフトの釣りでも有効だと思います」
確かに、ヘビーシンキングミノーが当たり前になった今の時代、渓流で最も求められる要素は、同じようにアップストリームの釣りをしていても、いかに他のルアーとの差を作れるか、言い換えればいかにナチュラルにそれを演出できるかで、釣果に差が出るように感じている。その意味では、このミノーは差別化に成功しているように感じる。ちなみに、今後のシリーズ展開は今のところ未定だが、今後も「小さなボディに大きなこだわりを詰め込み、他と同じようでいて全く異なる、埋もれない物作り」をしていくとのこと。目指すのは渓流ミノーにおけるオンリーワンや、リーサルウェポンと言われる存在だ。
サイズ=50mm
ウエイト=4.1g
カラー=全8色
価格=¥1,380(税別)
SHIMANO
https://fish.shimano.com
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