Foxfire『ミルクの中のイワナ』上映会

ルアー&フライの老舗メーカーであるティムコ社。そのアウトドアブランドであるFoxfireでは、豊かな水辺環境づくりを目指す「R.O.D(River of Dreams)活動」を2022年より開始している。去る9月6日、その一環として今話題の映画『ミルクの中のイワナ』の上映会が、本社(江東区菊川)近隣の映画館『Stranger』にて行われ、本誌編集部も参加させていただいた。

パンフレット

本作品は、我々の愛すべき対象魚、イワナの生息環境を巡る諸問題を、研究者、漁協、釣り人、釣り関連のジャーナリストなど、多方面の方々のインタビューをもとに、あらゆる角度から浮き彫りにしたサイエンス・ドキュメンタリー。本誌にも度々ご寄稿いただいた水産学博士の中村智幸先生をはじめとして、東京大学大気海洋研究所教授の森田健太郎さん、人工産卵河川の設置など新たな漁場管理法で注目されている高原川漁協の徳田幸憲さん、名著『職漁師伝』の筆者で各地の在来イワナに詳しい戸門秀雄さん、『瀬戸際の渓魚たち』で知られるフライフィッシャーの佐藤成史さんなど12名の方々が、それぞれの立場からイワナたちの現状と今後の課題を力説する。

また、それぞれのインタビューの関連箇所に挿入されるイワナたちの水中映像は、まさに息を呑むほど美しい。オショロコマ、ミヤべイワナ、アメマス、ニッコウイワナ、ヤマトイワナといった稀少なイワナたちも多く、特筆すべきはヤマトイワナの地方変異型である紀伊半島の幻の魚、キリクチの画像も収録されていること。イワナファンならずとも一見の価値がある。

さらに映画の後半では、電気ショッカーなど従来の方法を使わずとも、川の水を採取してそこに含まれるDNAを分析するだけで、そのエリアの生息数が確認可能な最新テクノロジー、『環境DNA分析』なども紹介されており、今後への期待がかかる。

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「種を守るとはどういうことか?」

映画のパンフレットにはそう書かれている。生息環境の悪化、放流魚との交雑、心無い釣り人による乱獲、漁協組合員の高齢化と人材不足など、イワナたちを取り巻く生息環境は、決して明るくはない。

ただ、どうすれば稀少なイワナたちを守っていけるのか? そのために我々人間は何をすればよいのか? 答えは出ないかもしれない永遠の課題に、さまざまな『状況証拠』を提示することで、本作品はイワナを愛する人たちのすべてが、この問題を共に考え、歩んでいくことを示唆している。

現在本作品は、山梨県魚連や今回のティムコ社など、上映依頼のあった場所での限定公開となっているが、来年の春には、満を持して五大都市のミニシアターなどで公開予定とのこと。イワナ好きにはぜひとも見ていただきたい作品である。

問い合わせ

一般社団法人Whole Universe 

公式サイトhttps://trout-inthemilk.com

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