上流に行くほど白点が薄れるヤマトイワナの渓
写真と文◎田崎 翔(Photo & Text by Sho Tasaki)
うだるような暑さが続く今年の夏。
平地の川は煮だってしまい、釣りする側の人間もツラいが、きっとそこに住む魚たちはもっと大変な思いをしているはず……。とはいえ、釣り人とは本当にげんきんなもので、それならば涼しい風が通り抜ける山岳渓流でイワナでも、とその時々で釣りが可能な場所を探し出す。
ヤマメ好きの僕がそんなことを言ったら、友人に「暑さでどうかしてしまったのか?」と驚かれそうだが、イワナも大切な渓流の対象魚のひとつだし、発売延期となったロッド(Path Proverシリーズ)の最終調整もあって、フィールドに出なくてはならない。そこで今回は、友人にアテンドを頼んで、彼のホームである山岳渓流に行くことにした。
集合場所に着いた時点でもう暑い。駐車スペースに着き、車から出ても暑い。涼を求めて来たのになんてことだ……。と思ったのもつかの間、川に降りるとヒヤッとした風が通り抜け、一瞬で汗が引いてしまった。
釣りを始めると、友人がすぐに一尾のイワナを釣り上げた。
「綺麗だね。でも白点がある」
彼が言うには、この川は元々ヤマトイワナが生息している渓で、下流は残念ながら放流されたニッコウイワナとの交雑で白点が交ざる個体もいるようだ。上流に行けば行くほど白点がなくなる個体が多くなるらしい。しばらくすると、僕にも白点交じりのイワナが釣れ、さらに上流に行くと、確かに先ほどより白点の少ないイワナがヒットした。
ところで、開発の段階では、ロッドにしても、ルアーにしても、実際に使ってみないと分からない確認事項が多い。今回もそうした項目を一つずつクリアしながらの釣りで、一番の収穫は、ルアーのウエイトが軽くなっても快適に釣りができること。遠投性能や手前の石を交わすために、川幅の割にはやや長めのロッドをテストしていたのだが、バックスペースさえ気を付けていれば不便は何も感じなかった。やはり若干長めのロッドの方が自分の釣りには合っているらしい。
だんだん川幅が狭くなってきて水深も浅くなってきたので、4.3gのシンキングミノーから、3.4gのそれにチェンジして様子を見る。軽さをいかして、フワッと漂わせるイメージでルアーを通すと、ギリギリで見切っていた魚たちとの距離が縮まった気がした。そしてとうとう現れたのは、白点が確認できないイワナ。小躍りしている僕を、友人は暖かい目で見守ってくれた。
その後、オレンジの斑紋が見事で、だいぶ歳を取っているんだろうなぁと思える一尾を手にして歓喜していると、その上で。白点のある個体が釣れた。
「今はこのあたりにもいるんだ…」
友人は驚いたというか、事実確認をしたようなつぶやきをしていた。白点交じりの遺伝子は徐々に勢力を拡大しているのかもしれない。
さて、白点のあるなしで、その個体がヤマトイワナであるかどうかを判断できないことは、僕も知っている。本誌でも紹介された富士川水系の甲州イワナがその良い例だ。それでも、今回のように白点のないヤマト系のイワナが釣れると、ついつい喜んでしまうのは、釣り人の勝手なエゴだろう。でも、僕はそれで十分だ、と車窓から抜ける熱風を頬に受けながらの帰路に思った。
【使用タックル】
●ロッド=ティムコ・パスプルーバー PRV59SML-2 “Rapture Trigger”(プロトモデル)
●リール=シマノ・ヴァンキッシュC2500SHG
●ライン=PE ライン0.5号
●リーダー=フロロカーボンライン5lb
●ルアー=ティムコ・イメル50S、ラウド45S他
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